2014年10月23日

山本夏彦さんが亡くなって12回目の秋。

 
 山本夏彦翁が亡くなられたのは、平成14年10月23日だったので、それから12回目の秋を迎えた。俗にいう13回忌である。しみじみと月日の経つのは早いものだと感慨もひとしおである。その年に生まれた子が立派な中学生となる年輪を重ねたのだから決して短いものではない。

事任本宮
 「山本夏彦翁とは誰?」、十年一昔と言うように若い世代では知らない人も多くなってきているのだろう。だが、山本夏彦翁といえば、真っ先に浮かぶのは「週刊新潮」の「夏彦写真コラム」か、文藝春秋の今は休刊となっている「諸君!」の巻末コラム「笑わぬでもなし」である。それらの出版社は、今話題の朝日新聞とは相容れぬ仲であり、時代が大きく廻っているのを実感させられる。

事任神社
 その文藝春秋−週刊文春・臨時増刊の『文藝春秋が報じた「失敗の本質」「朝日新聞」は日本に必要か』の「編集後記」は次のように始まる。
『 かって山本夏彦は、こう書きました。
<朝鮮人慰安婦のことを思えば夜もねられぬというたぐいの記事が、ある時期毎日のように出た。ことに朝日新聞に出た。四十なん年枕を高くして寝ていたのに急に眠れなくなったのである。新聞はその声を集めてずいぶん嬉しそうである。良心と正義を売物にするのは最も恥ずべきことだと知らないのである。>
 山本翁が今の朝日のあり様を見たら、どんな文章を世に出したのでしょうか―。』

事任神社
 右とか左ではなく、また、辛口とか辛辣だけでは言い表せないのは当然として、苦い嗤いや卓越した機知を秘めたコラムを越える者は、12回の秋を迎えても現れなかったと言わざるを得ないのだろう。

事任神社
 そうして、同じく「編集後記」は締めの前にこう記す。
『<私は断言する。新聞は次に来たるべき国難に際して再び三たび国民をあやまってあらぬところへつれ去るだろう。>
 山本翁がそう看破したのは平成元(1989)年のこと。いままさにその言葉が真に迫ります。』

事任本宮
 山本夏彦さんは、古くて新しいコラムニストである。時間の波に揉まれても色褪せない箴言は時代を超えて読まれ続けて欲しいものだと思うと共に、柿の木の枯葉が音も無く落ちるのを眺めながら、人の生死も漠然と身に染みてもの悲しげな秋を過ごした。
 

posted by 工房藤棚 at 19:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 山本夏彦

2014年10月13日

カレンダー キューブとお洒落な自律。

 
 「Calendar Cube English」は、Oliver's Stickers製のステッカーを、Cube4You 3*3*3に貼り付けたパズルであり、実に9色がラインアップされている。

Calendar Cube
 販売元は、キューブの通信販売で有名なtriboxで、貼り付け作業は同社が行っていて、「もちろん、一枚ずつ丁寧に貼り付け」て、価格の1,950円は長持ちしユニークなインテリアと考えれば高くはない。

Calendar Cube
 これは英語版で、上段は曜日を略さないで2ブロック、中段の月は英大文字3字で3ブロック、下段が日を赤数字により2ブロックで表示して、余白は白地色とするものである。写真は下地のキューブがオレンジ色であり、かなり華やかにカレンダーを強調していて個性的であり、パズルに興味が無い人にもかなりインパクトを与えるだろう。

Calendar Cube English
 深く考えなければ、どうってことのない仕組みなのだが、それぞれの文字は絶妙に配置されていて、当然白無地も必要なものである。最初にこれを造った人は、自分のことながら卓越したアイデアと按配に感服し、その出来に十分満足しただろう。
 それにしても、本当は必要ないブロックは何個あるものだろうか。

Calendar Cube English
 難易度は、3*3*3のキューブの一面を自分で揃えることができる人が、少し粘れば完成できるレベルだろう。普通のキューブは色だけを揃えればいいのだが、これは向きも必要となるので、少し難しくなる。
 それが、却って丁度良い障害となって、老若男女を問わず、キューブを食わず嫌いの人にとっても適切な難しさのパズルとなっている。
 特に、英語を学習し始めたパズル好きにとっては、これ以上のものはないだろうし、キューブを全面揃えることができる人も、暗記したパターンを操るとは違った面白さが新鮮に映るだろう。

カレンダー キューブ イングリッシュ
 ルービックキューブは、一面を揃えただけでは完成ではない。一つの目標点ではあっても、それだけでは十分な満足は得られない。しかし、それ以上を望もうとすると途端に難しくなる。自分の頭だけで考えて六面を完成できる強者は殆どいない。その上に、それを十秒以下で成し遂げる超人がいると知ると、それに向かってチャレンジする意欲さえも失われる。

カレンダー キューブ イングリッシュ
 それが、本カレンダーキューブは、揃えた一面が完成形である。それ以上はない。左右面も上下面も奥面も意味は持たない。更に、毎日楽しめて、毎日同じように頭の体操である。そう、これは現代の(40歳の異称ではない)初老の人の惚け防止に最適のアイテムなのである。戦後も七十年弱となり、所謂老人と呼ばれはじめる年代の人達も義務教育で英語を習っている。JUNやVANも知っている。そうしてルービックキューブの誕生は40年前なので、懐かしい想いをする人も少なくない世代である。

カレンダー キューブ イングリッシュ
 部屋の少し目立つ所に、今日の曜日と、月と、日を示しているキューブが、さりげなく置かれている。それは、お洒落というよりは、理知的で前向きに自己を律して生き生きと生きている証である。
 

posted by 工房藤棚 at 14:03 | Comment(2) | TrackBack(0) | パズル

2014年10月05日

「御嶽はくさい」の無念。

 
 御嶽山が7年振りに噴火して死者51人と戦後最悪の火山災害となってしまった。未だに不明者も十人以上と発表されていて心痛む。
 前は死火山とか休火山と呼ばれていて、有史以降鳴りをひそていたのだが1979年に突如噴火したことにより、火山の定義そのものが見直された山でもある。

花1
 「火山噴火予知連絡会」の会長は、「予知できなかったのか」と問われて「我々の予知レベルはそんなもの」。
 永年研究している火山学者も、「二度と被害を出さないようどうすべきでしょう」に応えて「火山に登らないことですね」。

花2
 地球から観たら、十万年も35年も一瞬なんだろう。だが、いつもは平穏で風光明媚な山に登り、あと1時間、いや5分違っていたら助かっただろう人たちの無念を想うと、人の運命の儚さと脆さに言葉を失う。
 一体何に導かれ連れられて逝ってしまったというのか。

花3
 長野県木曽町の収穫前の特産「御岳はくさい」は、降灰の被害に遭ったそうである。白菜に罪はないが、御嶽山では、硫黄のような臭いと呼ばれる硫化水素ガスが救援隊の行方を阻んでいる。
 

posted by 工房藤棚 at 18:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
                                       .
Logo