昨年発表され、新春まで発売が延びていたキャスト キーホール(CAST KEYHOLE)がようやく売り出された。前作キャスト ギャラクシーの登場は前年7月なので約半年振りの新作である。

青い外箱は総合難易度4を表していて、ひらめき指数が3、論理指数は4である。作者はキャスト シリンダーやキャスト ドーナツ、キャスト スクエア、キャスト ループなどでお馴染みのフィルランドのVesa Timonen氏なのでいやがうえにも期待は高まる。

最近のCastPuzzleは総合難易度-ひらめき指数-論理指数が、キャスト ギャラクシーは3-3-3、キャスト U&Uが4-4-3、キャスト ツイストが4-2-5、キャスト シリンダーも4-3-4、キャスト G&Gは3-2-3、キャスト デルタも3-2-3と総合難易度3と4に集中している。それは簡単ではないが難しくもない、若しくはやや難しいレベルであり、強烈な個性や度肝を抜く難しさがないのでインパクトに欠ける印象を受けるのはやむを得ないだろう。そのかわりに、誰にとっても諦めなければクリアを迎えることができるので、受け入れ易いのは間違いない。

現在は総合難易度6のキャスト ヴォルテックスも2008年6月の発売当時はゲームレベル5であり、その前のキャスト カルテットが世に出たのは2007年9月のことなのでもう随分前のことである。それは難しいパズルを創り出す困難さを物語っていて名作と誉れ高いキャスト エニグマやキャスト チェーンを超える逸品を、私たちは今後いつ手にすることができるのだろうか。

キーホールとは鍵穴であり、イメージとしてはなんとなく解らないわけではないが、テーマ漢字の「溝」のほうがしっくりくる造形である。2個のパーツ時の定番である金色と銀色のメッキに輝く片方には隙間があるので外せるのだが、それは『難解な迷宮』に挑む必要があるらしい。

意地悪や外連味はないので、時によっては紛(まぐ)れで外せる可能性も秘めているが、袋小路に迷いこむ紛(まぎ)れもあるので、評価は分かれるだろう。ただ苦労したとしても、それはキャスト U&Uやキャスト シリンダーとは異質の難しさであるのは間違いない。そうして、堂々巡りの狐につままれる感覚はキャスト デビルが思い起こされるものである。

贔屓目の感想と言われようとも、それぞれのCastPuzzleが曰く言い難い面白味や愉しさをひっさげてデビューすることや、キャストパズルと名乗るものは必ず水準以上のパズルであることには感謝の言葉しか浮かばない。その上意外と語られないが、千円程度で手に入る物とは思えない上品な仕上げや細部まで手抜きを感じさせない品質感も愛好品として高いポイントであろう。