美術にも芸術にも疎いが、理屈抜きで惹かれるものがある。その中でも奈良・興福寺の阿修羅像は飛び抜けた存在である。

現在は興福寺・国宝館に安置されていて、その三面六臂の特異な姿は現在の日本で一番愛される仏像であろう。

穏やかで、憂いを秘め、華奢で筋肉を削ぎ落とした仏高は153cmというからほぼ人間と同じである。
阿修羅とはインドの神話では悪霊鬼神であり、闘争を好む悪神であったが、釈迦の教えにより仏教の守護神となり、天竜八部衆の一尊に加わったとされる。

正面は、わずかに眉をひそめて慈悲深く敬虔に祈り、そこには強い意志が窺える。

向かって右面は、願いや忍ぶ心で静かである。
左面は、怒りか。厳しく目は少し吊り上がり、唇をかみしめる。
キャスト ヴォルテックス(CAST VORTEX)が阿修羅像のイメージから着想した動きと形状であるのは作者のAkioYamamoto氏が述べていて、妙に納得しなおさら愛着が深まったのを覚えている。

神秘的な趣と三つの顔と六本の腕ながら絶妙なつりあいに魅入られ、できることなら小さな阿修羅像を手に入れたいと願ってきたが、それが晴れて実現した。一目観た瞬間に決めた。

それはイSム(イスム)のTanaCOCORO〔掌〕シリーズで、仏高は177mmなので当然十分小さいものである。だが、それが却って身近に飾っておくには丁度良い大きさである。イSムの本気さは勿論のこと志と技術の高さが上の写真から伝われば本望である。