キャストパズルが「はずる」シリーズと衣替えしてからの第3弾はレベル6の「キャスト インフィニティ(CAST INFINITY)」である。ハナヤマからは公式なアナウウンスはなかったが当初はキャスト ダイヤモンド、キャスト ケーキと3作同時発売予定であった。それがインフィニティだけ8月6日発売予定となって心配していたが無事手に取ることができた。

∞マークのインフィニティとは、無限とか無限大の意で、電気保安業者が絶縁抵抗を測っていて計測値判読以上はインフィ、インフィと読んでいたのを思い出した。
日産自動車の北米などでのブランドや、コーセーの化粧品シリーズ名などに使われるように曰く言い難い格好良さがある。

キャスト インフィニティの形はまさに∞であり、外箱の『はずすまでの動きもはてしなく続くことから命名した』自信作は本当に久しぶりとなる難易度6を誇る。
調べてみると、初めは難易度5で発売されレベル6に格上げされたキャスト ヴォルテックスが2008年、反対に難易度6で売り出されたが途中からレベル5となったキャスト スクエアは2010年の販売であるから、ゲームレベル6を名乗るハードルは容赦なく高いしメーカーも安易な妥協はしていない。
それにしても、人によってはキャストパズル最難関と呼ぶキャスト ヴォルテックスが当初レベル6ではなかったように、あまり数値にとらわれる必要はないのだろう。怖れず・侮らずが愉しむ秘訣である。

シンプルでスマートな新作は、フィンランドのパズル作家Vesa Timonen氏によるもので、キャスト ループやキャスト ドーナツ、キャスト シリンダーなどを手がけている気鋭である。個人的に比較的新しいパズルの中では好感度一二を争うキャスト シリンダーの生みの親によるものだから期待は一層高まる。

予想通りの無駄に大きくもなく、小さ過ぎることもないメッキ仕上げの2ッの円形を取り囲むケースに入った不思議物体にはどんな手掛かりがあるのか興味深かったが、納得の動きと推理を働かせる面白さを秘めていた。
コロンブスの卵ではないが、斬新な発想とデザイン、それが難しいパズルとして成り立ち、なおかつ美しくてお洒落で外連味のなさは「はずる」シリーズの新しい代表作と評価されるだろう。

それは、殆ど探ることができない迷路か。2重、3重の怪しい溝と突起が単純な迷路でないことを物語っている。上下の動きは何かに阻まれる以外は自由である。暫くすると仕掛けの見当はつくがそれだけである。道なき道はどれほどの正しい選択眼を求めてくるのだろう。

「はずる」パズルは商品名と会社名が別々のパーツに加工されることが多い。しかし、今回はINFINITYとHANAYAMAは同じ部品に記されている。それを意地悪ととるか、見識の高さととるか。はたまた、その路を罠ととるか、王の行く道ととるか。

絶望が希望と変わる瞬間は突然にやってくる。キャストパズルが「はずる」シリーズに変わっても、外して元に戻すこと。そこにこそ醍醐味と達成感があることは変わらない。それはキャスト ダイヤモンドとは大違いで、キャスト インフィニティを始めから外した状態で渡されて初期状態に戻せる人は稀有なパズルセンスの持主で称賛に値するだろう。

希望はじっくり噛みしめなければならない。「そうきたか」と味わう余裕がなければならない。王道を往く者は諦めてはいけないが、焦るのはより禁物である。冷静な感激のみが帰り道を確かな道とする。それは誰も無限の時間は持ち合わせていないのだから。

追 記 --- 2016年8月6日 23:00 ---
実は残念な報告を書くことにする。
本来想定していたと考えられる手順より近道が見つかったのである。
上の『「そうきたか」と味わう余裕』云々は、その近道を指している。商品のばらつき等により現在のバージョンが全て可能かは分からないが、充分クリアと呼んで問題ない程度だと思う。キャスト エクアより違和感のないレベルだろう。
戻す行程で試行錯誤していたら、鮮やかなクリア方法を発見し、本来はこんなにスッキリして洗練されたパズルだったのかと驚いた。持ち方にもよるが外れる瞬間抜け落ちるほど力は一切使わないものだからAmazonさんのように怪我なんぞしたくてもできない。されどショートカットも捨て難い。
それは、東京から旅立ち大阪を目指していたが、意味もなく名古屋で目的を果たしてしまったような結末で、パズルの価値を大きく損なうものである。現在はほとんどの人がそれをゴールと理解しているのだろう。何故なら安易な近道なのだから。
その意図しない道を防ぐには、より遊びを無くし精度を高め無駄を埋める必要があるだろう。それでパズルとして成り立つのかは、かなり困難な気もするけれど対応が必要なのは当然である。
新しい対策品はかなりシビアな操作を求め、ある程度理解しないと果てしのない旅を余儀なくされるだろうが、それでこそ難易度6である。そもそも曲がりくねっていても一本道では意外性は少ないし、罠は罠と悟られないからこそ罠である。
かなり自由に操れるようになってきたので、それを踏まえた感想を追加すると、ヒントになってしまうがとてもリズミカルな動きが印象深い。
クリアした時に「そうきたか」と感じた人は、納得の本来の手順も探して楽しんで欲しいと願い、また改良を期待して記した。

再度の追記 --- 2016年8月11日 22:00 ---
某掲示板での余りの評判の悪さに、それほどかと不審に思いもう一度確認したら事態は更に厳しい状況であった。
上の東京からの旅の例えなら、はやくも新横浜で下車である。それは巧みに操れば簡単にできてしまい外れることに疑問の余地はない。この手数でクリアしていたら難易度6でなくても悪態をつくことは当然で十分理解できる。
外せた人は一体どの駅で降りたのだろう。勝手な推測では新横浜6割、名古屋3割、大阪1割程度か。評価が割れるのは当然である。また、途中下車した人達は元に戻せているのだろうか。実は正規に外した方が手数は掛かるが一番戻しやすい。
簡単過ぎると感じている人は、折角だからINFINITY∞と刻印してあるリングが先に外れるのは別解だと諦めて、それは外れないものとして再び挑戦したらどうだろう。仕掛けが分かっていても意外に手こずり少しはインフィニティを見直すことができるかもしれない。
メーカーとしても発売前にはテストを繰り返しただろうが、余りにも残酷な結果である。それは許せる範囲をはるかに超えている別解であり、特に今回記した解法は担当者の血の気を失なわせたものだろう。
都合のよい先入観や思い込みがあると見えるものも見えなくなってしまう典型であり、何事も焦らずに念を入れた慎重な確認が大切なことを教えている。
発売延期や外箱の説明文のシール貼りを見ると随分と無茶な開発時間だったのだろうか。卓越し斬新なアイデアとデザインの素材であるからより残念である。
結局、この感想もチグハグで大袈裟な上に支離滅裂と思われただろうが仕方がない。HANAYAMAはキャスト インフィニティを華麗に生き返らせることができるのかパズルメーカーとしての力量を問われるが、それは直ぐにでも成し遂げるに違いないと信じて待ちたい。