将棋駒を作るときに一番重要な道具は、やはり印刀であろう。印刀を自由自在に操れるようになってようやく一人前である。
それから、大切なのが刃物を研ぐ技術である。それはもう車の両輪のようなもので、残念ながら永遠に切れる刃物はない。だから研ぐことが下手な一流の駒師はいない(と思う)。
印刀自体は百円均一の物でも、それなりに彫れるという意見もネットでみた。「弘法筆を選ばず」の諺もよく知られている。安い彫刻刀一本を愛用し続けているという有名な方もいて感心した。けれども、それもこれも全てしっかり研いでいることは勿論であろう。
自分の思い通りに駒を彫るためには鍛練が必要である。同じように、自分の思い通りに研ぐためには、地道な情熱と時間と感性が欠かせないだろう。
王道なのか邪道なのか、安易に鏡面仕上げするために印刀用の革砥を作ってみた。端切れの革だけは不自由しないので思い立ったら直ぐである。
200*150の板に、ヌメ革の銀面(表側)と床面(裏側)を貼り、床面は金属磨き粉を使うので両側にスぺーサーを取り付けた簡単なものである。
随分と古くからある金属磨「ピカール」の効果は絶大で、たちまちピカピカ・ツルツルである。見映えも切れ味も上がるが砥石による研ぎが不要になるわけではない。だが、思いのほか簡単に切れる状態を永く保つ道具として結構有効ではないかと試行錯誤を続けている。