『 「19兆円ですよ。そんな巨額の金を、こっそりと電気料金に上乗せしていいんですか」。2004年春、経済産業省の一室で上司に詰め寄る若い官僚たちがいた。使用済み核燃料を再処理、プルトニウムなどを取り出す核燃料サイクル事業。これに膨大な費用をかける愚かさを、推進する立場の経産官僚が説いた。クーデターの始まりだった。』
こう始まるのは、静岡新聞「日本を創る−原発と国家 第3部 〔3〕19兆円の請求書−頓挫した官僚の「決起」」である。
『「国は時代遅れになった政策の誤りを認められない。費用は国民の負担に転嫁されようとしている」と告発した。
…
「会社の判断でやめると経営責任を問われるが、国が中止するなら従うと言っていた」』
原子力発電のコストは安いと喧伝されているが、肝心な費用を限定すればという前提条件がついているからまやかしである。本来なら未来永劫管理していかなければならない核廃棄物をナメテいる。
『 費用の問題を解決するため、東電をはじめとする電力業界は並外れた政治力を発揮する。元官僚によると03年に電力自由化の枠が拡大される際、電力業界は交換条件として、将来に予想される膨大な再処理費用を、電気料金に上乗せすることを国に要求。自民党政権はこれを受け入れた。』
核燃料サイクル費用を、実質的に競争のなかった電気料金で回収できれば電力会社は安泰だ。現在野党の自民党の原子力施策の批判に迫力がない所以である。
『 だが結局は、サイクル推進の立場の政治家や電力業界にあっけなくつぶされ、官僚たちは左遷。クーデターは頓挫し、ある者は役所を去った。
再処理費用の"前払い"は開始され、これまでに既に2兆円超が積み立てられている。』
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クーデターは失敗に終わった。どんなクーデターでも成し遂げなければ、決起者には悲惨しか残らなかっただろう。だが、結果はこのザマである。
『 六ケ所村の再処理工場も、技術的な問題でつまずき、07年末から事実上停止状態だ。既に機器は汚染され、解体にも数千億円がかかるという。
…
一方、再処理工場や各原発では使用済み燃料がたまり続けている。どちらの保管施設も満杯に近く、原発の運転継続が危ぶまれる状況だ。』
根本が間違っていたのじゃないだろうか。近い将来技術が進んで、それが可能となるようにと見切り発車したのだろう。しかし駄目なもの駄目、無理なものは無理である。必要なのは永遠と呼ばなければならない程の時間か。
『 前進も後退もままならない使用済み核燃料の再処理問題。原発事故で露呈した原子力政策の長年の矛盾が、行政と業界にのしかかっている。』
人の想像力は知れている。あれだけ大騒ぎした原発施設での大爆発を知りつつも、何食わぬ顔して放射性セシウムまみれの稲藁を出荷する。哀れ牛は喰う。
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