「はずる」の新作キャスト アローズ(CAST ARROWS)が6月30日に発売となっている。今回はAmazon以外の販売店でも無事に発売日に購入できた。
アローとは矢のことで、ハートの穴に4本の矢が刺さっていて、その矢を外すことを「はずる」。当然ながら1本の矢が抜けたら他の矢は簡単に外すことができる。そして、四本の矢はほぼ同形である。
その材質は「鉄」。矢もハートも約3mmの鉄板を打ち抜いたもので、それはもうCastPuzzleとは無縁のもの。結局キャストパズルの名称を廃止したことも、このように材料や製造方法をより自由にしたかったという一面もあったのだろうが、その趣に深みを求めるのは無茶である。
ゲームレベルは3であり、難しくはない。そんなことよりも大きなネックはハートの空間の形状だろう。それは誰が見てもこの形ならそれしかないと見当が付くもので、それがまたその通りになってしまうことは余りにも浅く軽くて薄く安易である。試作の初期段階かと疑うほど投げ槍であり洗練とは対極であろう。かろうじてパズルとして成り立っているのは、あることに気が付かなければ操作性は良くないので簡単でないという皮肉であり、僅か紙一重の差である。
戦国時代の中国地方の雄であった毛利元就の「三矢の教え」は有名である。臨終の時、3人の息子に矢を一本づつ与え「折ってみよ」というと3人とも簡単に折ってしまう。次に三本束にして折らせたが今度は容易にはいかない。「一本の矢なら折れるが、三本束になると折れない。兄弟三人力を合わせるように」と遺言したと皆が知っている教訓である。
三本の矢が折れないのなら四本の矢はより強いかというと、そういうわけにはいかない。団結すれば力となるが一本一本を少し工夫して弱点を探し出せば、所詮は一本の矢である。
パズルには、クリアしてもよく理解できないものがある。外すことより元に戻すほうが困難なものも少なくない。一回できても二度め三度めでも苦労する強者もある。外れる瞬間大きな感動を味わうことができる逸品もある。何度でも何時でも挑戦したくなる秀作がある。されど、そんなパズルは簡単には生まれないものだなとしみじみ4本の矢をじっくりと見た。